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2010年8月24日 (火)

深紅の大優勝旗は遂に沖縄に! 〜決勝観戦記〜

悲願の夏の大優勝旗は南の海を渡り、沖縄へーーーーー
2010年8月21日、第92回高等学校野球選手権大会は沖縄代表・興南高校の優勝で幕を閉じました。
沖縄勢初の夏の甲子園優勝、そして史上6校目の春夏連覇。
その瞬間をこの眼で見たくて、その場所に立ち会いたくて、とうとう甲子園決勝に行きました。
甲子園は何度か行っていますが、初の決勝です。
(以下、画像をクリックで拡大)
Img_2637

そこには別世界がありました。自宅のある埼玉で普段どおり仕事をする日々に帰った今、思い返してもまるで夢のような空間でした。
決勝の観戦記を記したいと思います。かなり長くなると思いますが、ご容赦を。
(なお、当日の観客や入場の様子などは、いつどこで誰の参考になるかも判りませんので、甲子園の他の画像などと共に別エントリーを立てようかと思います。)

決勝は春の王者・興南と東海大相模の決戦となりました。以前のエントリーで触れたようにこの両者には浅からぬ因縁があり、この2校の対戦には感慨を覚えます。

試合開始前。
まずは興南の選手がグランドに姿を現しました。少し遅れて東海大相模の選手達。
両チームに送られた盛大な拍手の中、ここまでやってきた選手たちの闘いを思うと、「良くここまで残ったなあー」という感慨にとらわれます。
全国4028校中の最後の2校。正直、もうここまで来たら充分だ、とも思いました。ですが、ここで勝敗を決めないのは半端な第三者の感傷でしょう。
しかし、それほど両校の選手達は輝いて見えました。

決戦前のマウンド
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1塁側アルプスを埋めた興南高校を応援する人々の熱気は試合前からうねり、場内を渦巻いています。そんな中、淡々とアップをする選手。
本来は自分たちの為に、好きで野球を始めた筈なのに、いつの間にか沖縄の期待を一心に背負っているその姿には、しかし気負いなどは感じられず、むしろ落ち着いて頼もしく見えます。

アップをする興南の選手達
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沖縄は、春の優勝は3度あるものの、夏の優勝は届かないーーーそんなイメージがいつの間にか定着していたかの様に思います。
しかし、今年の興南高校は初の夏の優勝を予感させてくれるに十分なチームでした。エース島袋君の安定感。身体能力の高さに裏打ちされた打撃力、守備力。全てにおいて高いレベルのチームです。
終わった今だからこそ言えますが、正直、対抗馬はいなかった。しかし、全国の高校が「打倒興南」「打倒島袋」を合言葉に凌ぎを削る中、夏を勝ち上がるのは至難の業・・・。特に、島袋君にかかる重圧は並大抵の事では無かったでしょう。

その肩にかかる期待は既に自分だけの物では無かった
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私が球場に入ったのは9時過ぎでしたが、試合開始まであっという間でした。
13時。両チームの選手たちがホームプレート前に集まり、いよいよ試合が始まります。

両チーム整列。この後どんな試合が展開されるかは誰ひとりとして知らない
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興南は後攻。島袋君の投球に注目が集まります。
初回、東海大相模は1番の渡辺君がストレートをセンター前に運びますが、4番大城君が併殺で0点。
島袋君は今までと一転、明らかに変化球主体のピッチング。

島袋君 この日は制球重視、打たせて取るピッチングに見えた
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対する一二三君は初回から全力の投球。興南にヒットを許すものの、3回までを0点に抑えます。しかし、制球が安定しないのは見て取れました。急造サイドスローの上に何しろ3連投ですからね・・・。

一二三君 投球、打撃、フィールディング、全てにおいてセンスを感じた
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3回まで両チーム0点の試合は、両投手が連投と言うことを考えると、意外や投手戦になるかとも思わせる展開でした。

<沖縄と甲子園>


〜〜〜

沖縄が初の甲子園出場を果たしたのは、1958年、第40回大会の首里高校でした。この時、沖縄はまだ米国の統治下にあり、パスポートとドルを持っての大会出場。持ち帰った甲子園の土が、当時の検疫に引っかかり、海中に投棄されたのは有名な話です。

その10年後、現監督の我喜屋さんが興南高校の主将として甲子園出場、ベスト4に輝きます。その後は豊見城高校が3年連続のベスト8を果たしますが、優勝旗はまだまだ遠いものでした。

そして、1991年第72回大会、名将栽監督率いる沖縄水産が、とうとう決勝へ駒を進めますが、天理高校の前に惜しくも0−1で準優勝。

さらに翌1992年に2年連続の決勝進出を果たします。いよいよ優勝か!と機運は高まりますが、大阪桐蔭高校に阻まれ、2年連続の準優勝に終わりました。

この2試合とも、私はテレビの前で夢中になって応援していましたが、優勝は果たせず、なんとも言えない喪失感に襲われた事を覚えています。私ですらそうですから、沖縄、特に高校野球関係者の落胆は想像を超えるものでしたでしょう。やはり優勝には届かないのか、と。
〜〜〜

・・・試合が動いたのは、一二三くんの球威が落ちてきたように見受けられた4回裏、興南の攻撃でした。
1アウト1、2塁から伊禮君がセンター前に弾き返し、待望の興南先制点。
このセンターに抜けていった打球の航跡に、沖縄の優勝へ続く道がはっきりと見えました。

この打球にも、ドラマがありました。

<ハイサイおじさん>


〜〜〜
高校野球ファンにはお馴染みの、沖縄の高校が出場すると演奏される軽快な「ハイサイおじさん」。それが今年は初戦に一度だけ演奏されて以来、演奏されていなかった事をご存知でしょうか。

それというのも「歌詞の内容がそぐわない」という一通の投書が地元紙に掲載された事が発端でした。
産経ニュース「【甲子園・夏】あの名曲…応援歌「ハイサイおじさん」が教育的指導で消された」
自粛となってしまったハイサイおじさん。しかし、それが決勝を前に復活する事となります。
沖縄タイムス「帰ってきた「ハイサイおじさん」 自粛に演奏の要望殺到」


そして、4回裏1死1、2塁。打席には伊禮君。この時、応援が「ハイサイおじさん」に変わりました。私は「あ、ハイサイおじさんだ!」と思ったその瞬間!

快音を発した伊禮君の打球はセンター前に抜けて行き、2塁走者がホームイン、先制!

今大会のハイサイおじさんの経緯を知っていた私には一気に鳥肌が立ちました。

正直言って、野球において第三者の応援がもたらすものって言うのはあまり信じていない私ですが、この時ばかりはあまりのタイミングに恐ろしくなりました。

もちろん、ハイサイおじさんはチャンスで流すのが通例で、チャンスイコールタイムリーという可能性は高いのですが、あまりにもタイミングが良すぎて・・・。

ハイサイおじさんの歌詞は、誤解を恐れずごくごく簡単に言うと始終飲んだくれているおじさん、の話なのですが、この時はなにか「おじさん」がアルプススタンド全体に降りてきたような気がしたんですね。

まあ、馬鹿らしい話、と笑われるのがオチだと思いますが、こんなエピソードも伊禮君のタイムリーにはあったのです。

〜〜〜

興南打線はこの回、7本のヒットを集中させ、失策も絡み一挙7点。今大会、何度も見られた集中打で一気に試合が動きました。
とにかく、興南の各打者は腰を据えて、ボールを引きつけて打ちますね。スイングスピードが早くないと出来ない打撃です。
今でこそ「強打興南」ですが、ここに至るまでの道のりは簡単なものではありませんでした。

<貧打興南>


〜〜〜

我喜屋監督が興南の監督に就任したのは2007年。興南高校は昔こそ沖縄では甲子園常連と言っても良いくらいの存在でしたが、いつしか名前を聞かなくなっていました。

そして就任直後の2007年、いきなり夏の甲子園に24年ぶりに出場します。その時の活躍を見て入学して来た生徒が、今の3年生達。

しかし、翌2008年春には東浜巨投手を擁する沖縄尚学が春の選抜で優勝します。興南より先に春夏連覇の期待がかかる2008年夏、沖縄尚学は地区大会決勝で伊波翔悟投手を擁する浦添商に敗戦。代表となった浦添商は史上初の同県、別の学校での春夏連覇に挑みますが、ベスト4で涙を呑みました。

しかしながら、沖縄のレベルがやっと全国を狙えるまでに上がって来た事を実感する出来事でした。

いよいよ優勝旗が現実の物となって来たそんな中、2009年春に興南高校は2年生でエースとなった島袋君を中心にセンバツ出場を果たします。

そして迎えた初戦の富山商戦・・・島袋君は延長10回を19の三振を奪いながらも味方の援護が無く、挙句には失策絡みで2点を失い、初戦で姿を消す事になりました。続く夏も出場を果たしますが、明豊高校に無念のサヨナラ負け。

「島袋がいるのに勝てない」そんな評価がまとわりつき、その矛先は援護出来なかった打線に向けられました。「興南は打てない」と。

打撃陣からすると悔しかったでしょう。なんと一日1000スイングを課し、徹底的に振り込むーーーそんな努力を続けて来た事が、今の「強打興南」に繋がったのです。私なんかが想像するよりも遥かに悔しく、遥かに苦しい練習を続けて来た事と思います。
〜〜〜

一二三君はさすがに連投の疲れもあり、球威が落ちてしまい、この後も6点を追加され、6回でマウンドを降りました。しかし、観戦している誰もが本来の投球ではない、という事を知っていたと思います。決して打たれたことに対して揶揄する声は上がらないでしょう。良く投げました。

我如古君の3ランももの凄いスイングでした。小さな身体全体がまさに「バネ」、身体全身で打っていました。かと言って決して大振ではない・・・この打球に興南選手の身体の強さが見て取れました。

一二三君の後を継いだ江川君の投球も印象に残るものでした。「自分の投球をするんだ」という事だけが頭にあったのだと思います。表情は帰宅して録画を見なおしてわかりましたが、実にいい顔をしていましたね。最後の夏、最後の甲子園で良い投球だったと思います。

そしていよいよ、沖縄に優勝旗が渡る瞬間がやって来ました。
球場全体が異様な雰囲気の中、島袋君は最後に渾身のストレート!27個目のアウトを「こだわってきた勝負球」ストレートで奪い、その瞬間、深紅の優勝旗がとうとう沖縄の地に渡ったのでした。

この頃になると、もう私はふわふわしていて、何か目の前で繰り広げられている光景が夢のようで・・・観戦者というだけの私が何を、と笑われるかも知れませんが・・・あまり現実感が無く、ボ〜としていましたね、今思うと。

興南高校、夏の甲子園を制し春夏連覇!
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東海大相模の選手、勝てなかった事は残念だと思うけれどこの決勝にまで来たという事は誰よりも誇っていいと思う
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終わってみれば、やはり興南高校の圧勝でした。ここまでのチームを創り上げた監督、選手たちの努力に敬意を評したいと思います。
しかし、一つだけ言うならば、島袋君と共に頑張って来た3年生ピッチャー、砂川君にどこかで投げて欲しかったなあ・・・聖光学院戦、もしくは報徳学園戦で先発もあるかと思ったのですが。川満君が3試合かな、投げているだけに、せめてそのどれかでも・・と思うのは外野の余計な声でしょうか。
砂川君は選抜後に島袋君が身体と気持ちを休めている間、主戦として九州大会を任せられ、チームを九州王者へと導きました。他チームならエースになれたかも知れません。甲子園で一度も登板が無かった本人やご両親の胸中を思うと・・・・。
でも、私が簡単に考えるよりきっと、確かな信頼関係がチーム内にはあるのでしょうね。それこそ当事者でしかわからない。そう考える事にします。

それにしても、今大会はベスト4に進出した4校のうち、実に3校がほぼ一人の投手に連投を強いるという、時代に逆行するような形となりました。これだって前述したようにチーム内で折り合いは付いているのでしょうし、それだけの存在である3人の投手だったと言うことなのでしょうが、この猛暑の中で連投をする負担を考えると、もう少しなんとかならんのかな、と考えてしまいます。

話がそれました。

試合は終わりました。そして閉会式が行われ、あれほど熱を帯びていた球場からは熱気が去り、日は少しずつ傾き、グランドには決着の着いた両者が並んでいます。
Img_2898

何度もいいますが、決勝まで残ったという事は素晴らしい事です。
敗者に「準優勝おめでとう」というセリフは違和感を覚えますが(たぶん私が敗者だったら「なにを!」と思う)、ここまで来た2校には祝福があってしかるべきかも知れませんね。

もちろん、この2校だけでなく、甲子園まで来れた選手達は本当に胸を張って良いと思います。
私は高校野球経験者ですが、自分に出来る努力はしたけれど、甲子園を目指している選手の努力には気持ちでも内容でもとても及びません。普通の弱小野球部でしたし、甲子園なんて目指してもいませんでした。
でも、甲子園に来た選手たちは、自分たちの努力で掴んだ甲子園なのです。
そこに、どうしようもない私との差と、羨望と、尊敬を覚えます。年齢も関係ありません。
もちろん甲子園に出る事が全てではありません。地区予選で涙を呑んだ選手達の方が遥かに多いですし、その努力は尊い。

そんな中、ここまで来た選手達。満員の観衆が無責任に見つめる中、グランドに登場して来た両チームの選手達を見て本当に凄いな、と思いました。甲子園のグランドは最高のご褒美なんだと思います。

深紅の優勝旗はとうとう沖縄へ
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スコアボード上には興南高校の旗が残された
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選手たち、お疲れ様でした。これからは好きな事して思いっきり遊べ!
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もちろん、甲子園にも光と影があり、新聞にあるような美談ばかりではありません。
それでも、3年間、苦しい練習に耐えてきた事実は本物ですし、観るものに感動をくれる事も本物です。
本当にお疲れ様でした。

最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました。

初めての決勝観戦、とても思い出深いものとなりました。

興南高校の選手達、沖縄の方々、おめでとうございます!

あ〜あ、来年の夏まで長いな・・・・・

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コメント

始めまして。
過去記事に失礼いたします。
沖縄 甲子園 で検索してたどり着きました。

私は関西に住むうちなーんちゅですが
興南の優勝記事を懐かしく読ませていただきました。
今でも最高の思い出です。
号外も特集雑誌も買って今も大事に保管していますよ♪

昨日は初めて甲子園に行き沖縄尚学の試合を見ましたが
甲子園って楽しいですね!
あの臨場感や空気で高校野球のファンになりました。
(それまでは沖縄戦しか見てなかったです)

2回戦以降も行けたらいいなー。

そうそう!
興南高校にはあの年の秋の文化祭に行きましたが
ナインの皆さんの周りには人だかりができていました。
島袋君は1人、学校の周りを歩いていてマイペースそうな感じでした。

それでは 失礼いたします。

投稿: さくら | 2013年8月12日 (月) 13時20分

>さくらさん
初めまして、コメントありがとうございます。
こんな過去記事にコメント頂いて、とても嬉しいです。お陰で、私も久しぶりに読み返し当時の思い出にひたることが出来ました。しかし改めて読むとメッチャクチャ長い・・・良くぞ読んでいただけました。

甲子園、行かれたのですね!あの独特の雰囲気はやみつきになりますよね。高校野球のファンになったとのこと、何故か私もとても嬉しいです。これから沢山高校野球を楽しみましょう!!
興南高校の文化祭ですか、いいなあ〜そういうの。当時の主力選手は大学でも頑張ってますよね!彼らの野球人生がこれからも幸多いことを祈っています。
まずは今年・・・沖縄尚学、頑張れ〜!!

投稿: BJ | 2013年8月12日 (月) 22時48分

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